WAR IS OVER!
IF YOU WANT IT
(John Lennon / Ono Yoko)
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昨今、サスティナビリティ(持続可能性)が重視される風潮になってきています。
その時代の流れに伴い、生地や革においても様々な動きを見せています。
ヴィーガニズムの流れから植物由来のヴィーガンレザーというものも世の中に広がりつつあります。
サボテンやキノコなどから作られたレザーを一度は聞いたことがありますでしょうか?
KENTO HASHIGUCHIは牛の本革を使用したバッグを制作しています。
一度はこの「革」について触れておきたいと思っていたのでこの機会に今の考えを書きたいと思います。
革の基本的な知識とともに。
そもそも革はどこからやってくるのか?
現代において牛が革のために育てられ殺されることはまずないです。
食用の牛の副産物として原皮をとり、毛を除去して、腐らないように鞣(なめ)して、革になります。
(ゴールデンカムイでは刺青人皮を鞣す方法を話すシーンがあり、処理が甘かったみたいなことを言ってます。流れは牛の時も同じです)
ちなみに一般的に「皮」は皮膚や野菜の皮の意味で、
「革」とは「牛などの皮膚から毛を取り去ってなめしたもの」を指します。
なのでバッグやベルトなどの加工品に使われているのカワを指すときは「革」を使います。
読み方が一緒なのでややこしいですが全く別の意味です。
弊社へバッグにお問い合わせの際は「皮」ではなく「革」を使うとGOODです。(どっちでもいいですが)
さらにちなみに「革」という字には「前のものをとりはらって、様子を変える。改める。改まる。」という意味もあります(革命、改革など)、どことなく革に加工工程に通ずるものを感じます。
脱線しましたが、「革」私たちが食べている牛肉の副産物としてできるものであって、みんなが牛肉を食べなくなればもちろん革の生産量も減ります。
何年か前に狂牛病が流行ったときは牛の生産量が減り、革の値段も上がりました。
世の中は、人間が新しく生産したもので溢れています。
その中で革という存在は、人間の食という必要不可欠な要素(牛を食べる必要が本当にあるかは一旦置いておいて)から出た副産物であり、生産までの流れもシンプルで自然的で馴染みやすく、他の素材に比べてかなりエコに感じます。
ちなみにファーやエキゾチックレザー(ダチョウやクロコダイルなど)は食用ではなく革のために育てられることが多く、多くのブランドがノーファー宣言などを近年してきました。牛革とこれらは似て非なる生産過程を持ちます。こういったレザーに関してはもちろん賛同できませんし、今後も使うことはないでしょう。
では、最近出てきはヴィーガンレザーや人工革などはどういったものなのでしょうか。
ヴィーガンレザーは植物由来(サボテンやキノコなど)で動物性を使わないことをコンセプトにした人工革です。
植物由来を言われるとなんとなく良さそうな気もしますが、中身はそうでもないことがあります。
原材料サボテン100%ではもちろん革のような質感が出ることはありません。サボテンと一緒に使われるのがポリウレタンと呼ばれる樹脂などです。
このポリウレタンなどを使うことでサボテンの繊維がレザーっぽい質感に変えられているのですね。
個人的には人工的にこういったものを生産することが、革の生産ほど自分の中にはスッと入ってこないのですが、それよりもこのポリウレタンなどの樹脂が石油由来だったりすることもあり、環境配慮と言いながら何がなんだかという感じはします。
もちろんこだわって使われる樹脂も植物由来を使っているところもありますが植物由来の樹脂や「土に還る」系の素材もまだまだ実態が怪しいところがあります。
何よりこのポリウレタンなどの樹脂の1番のデメリットは加水分解することです。3年もすれば日光や空気中の水分などによってボロボロになることもあります。
そういった点では本革は手入れすれば10年以上持つ丈夫な素材です。
という感じで新世代の人工革の謳い文句をそのまま手放しで喜んで入られないのが現状と感じています。
正直現状ではまだまだ情報が少なく、どれが正解とは言い難い状況ですが、人間が牛肉をこれだけ食べている以上、革の原料は出るわけなのでそれを利用するのが自然的で良いと感じています。
僕は日産パオという30年以上の前の車を乗っているのですが、いつも車のメンテナンスでお世話になっている会社のブログで「究極のエコカーは廃車率の低い車だ」と書いていました。
現在の法律では生産から13年以上たった車は車検の料金が高くなります。表では環境配慮とされていますが、実際は買い変えを促進させる経済対策だったとか(本当に環境配慮にするならその車の燃費で測るのが良いと思います)
似たようなことが今まで話していた革にも当てはまりそうな感じがしてます。人工革は相対的に耐久が低い、本革は長い。早く買い換えてもらおうとするなら先にダメになる方が事業者側としては嬉しいのかもしれません。
人間が好き勝手してきたことを考えれば、今の環境配慮の流れは良いと思いますが、上っ面だけにならないように気をつけたいです。
そもそも牛の大量畜産自体が問題となっている場合もあります。
大量の牛のゲップがオゾン層を破壊しているという話もあります。
そういう意味では牛の畜産は減った方が環境面には良いかもしれません。
ですが革の生産量・消費量が減ることによって畜産が減るわけではないです。その向きに力は働いていません。食肉としての目的が第一なので。
この辺りはまだまだ最近議論になってきている難しい問題です。